花が建築になる
手前の三本の茎が、縦長の画面を分割している。その花びらは視界に重なり、地平線より高く伸び、花菖蒲の畑がまるで木立のような高さを持つかのように感じさせる。広重は前景の対象をこのように拡大することがしばしばあったが、この作品ではその手法がとりわけよく効いている。花は名所を飾る添え物ではない。花そのものが、この場所なのだ。
季節を告げる行楽地
堀切は江戸中心部の北東に位置し、栽培された花菖蒲の名所として知られていた。訪れる人々は、中景に描かれているのと同じように、狭い畦道を渡りながら花畑のあいだを歩いた。彼らの笠や着物が、青、紫、白の花びらの下でもうひとつの、より小さなリズムを刻んでいる。
意匠された色彩、観察された品種
摺師が顔料を調整し、版木が摩耗するにつれて、刷りごとに色合いは変わりうる。それでもこの構図は、色づいた花と緑の葉の律動する交替に支えられている。広重は植物としての正確な観察と、図案としての大胆な発想とを結び付け、平らに摺られた形が、生い茂る庭を覗き込むような感覚を生み出している。
花の高さから見た庭
手前の花菖蒲は、その背後の景色を遮るほど高く伸びている。茎がつくる幕越しに、はるか遠くの人々を探さねばならず、人と観賞用の植物とのふつうの序列が逆転している。広重が切り取ったこの構図は、見る者を湿った地面のすぐそばに置き、目が広い花畑へと至る前に、一輪ずつの蕾や開いた花を見比べさせる。
色は品種の違い以上に、開花の段階を分けている。濃い青、淡い紫、白の形が緑の葉のあいだで交互に現れ、その中心には黄色の点がのぞく。すべての品種を網羅せずとも、この版画は豊かさを十分に伝えている。その楽しさは、違いを伴う繰り返しから生まれる。ふたつとして同じ輪郭で配置された花はないが、それらが集まることで、庭は画面の外へも続いているように感じられるのだ。
出典と参考資料
- 東京富士美術館作品記録、制作年、寸法、作家についての解説。
- メトロポリタン美術館 コレクション検索関連する摺りとシリーズの記録。
