並外れた大きさで描かれた名木
画面手前の幹は、亀戸の梅屋敷にあった名木「臥龍梅」のものである。広重はこれを拡大し、トリミングを施すことで、枝はまるで建築物のような存在感を放つ。花々は、黒々と力強い幹の姿の中に点在する、淡く小さな彩りとなっている。
枝の隙間の向こうに広がる庭園
枝の隙間からは、他の梅の木々や参詣者たち、そして赤く染まる地平線の下に低い柵が見える。この極端な大小の対比は、遠近法によらずして奥行きを生み出す。同時に、目の前の枝越しに、季節を楽しむ人々の姿を眺めるという、実際の身体的な経験をも再現している。
江戸の版画からパリの絵画へ
フィンセント・ファン・ゴッホは浮世絵を蒐集しており、1887年、この構図を油彩で模写した。彼は赤と緑をより強く際立たせ、細部に手を加え、他の版画から取った装飾的な文字で画面を縁取った。両者を比べれば、広重が国際的にいかに大きな影響を及ぼしたか、そして原画のトリミングがすでにいかに大胆で近代的であったかが見えてくる。
画面に収まらない手前の枝
古い梅の幹は近すぎて、画面に無理なく収まらない。幹は下から入り込み、上へと抜け、一本の枝が横切るように視界を分断する。この大胆すぎるトリミングによって、遠景はかえって新鮮な生々しさを帯びる。小さく描かれた参詣者たちや、繊細に連なる花木の列は、まず視界を塞ぐこの巨大な形の周りを見回さなければ、目にすることができない。
ファン・ゴッホがこの版画を模写したのは、見慣れぬ主題そのものよりも、その構成に惹かれたからだった。平面的な色彩、唐突な画面の切り取り方、そして広い余白が、ヨーロッパ流の陰影表現によらずいかに空間を組み立て得るかを、この作品は示していた。彼は自らの絵画版で色調をより強め、文字による縁取りを加えた。両者を比べると、広重の抑制がかえってはっきりと見えてくる。原画の力強さは、色彩が声高になる以前に、まず配置そのものに宿っているのである。
出典と参考資料
- アムステルダム国立美術館 収蔵品記録広重の刷り、題名、シリーズの背景について。
- ファン・ゴッホ美術館《花咲く梅の木》ファン・ゴッホによる模写と、浮世絵との関わりについて。
